ワイン好き必見!国をなす20の州全州でワイン生産が行われるワイン大国イタリア。今も昔も愛好家から熱烈な支持を受けるワイン生産国です。そんなイタリアの代表的な産地と銘柄を紹介していきます。


1.ロンバルディア州

ミラノから車で約1時間のところにあるパヴィア県オルトレポ・パヴェーゼ(Oltrepo Pavese)。ミラネーゼたちのデイリーワインがたくさんつくられています。土着品種のクロアティーナやバルベーラなど、しっかりボディの赤に加え、国際品種のリースリングやピノ・ネーロまで、バラエティに富んだコスパのいいワインが見つかります。温暖なイゼオ湖の近くでは、瓶内二次発酵でつくられる優美なDOCG※1 フランチャコルタ(Franciacorta)が秀逸。なかでも白ブドウのみでつくられた、デリケートな泡立ちのブリュット・サテン(Brut Satèn)は、ぜひ飲んでおきたいスパークリング・ワインです!

2.ピエモンテ州

世界遺産に登録されている、クーネオ県の息をのむような美しいいブドウ畑では、イタリアの偉大な赤ワインDOCG バローロ(Baroro)DOCG バルバレスコ (Barbaresco)がつくられています。どちらもネッビオーロ種100%。名前の由来は、冬によく発生する深い「Nebbia (ネッビア 霧の意)」から来ているとか。超熟ワインなので、なるべく古いヴィンテージをお試し下さい。ロンバルディア州に近い、州の南東に位置するDOC※2 コッリ・トルトネージ (Colli Tortonesi)では、日本ではあまり知られていない、パワフルで長期熟成に耐える貴重な白ワインに出会えます。印象的な香りを持つティモラッソ種は、美しいミネラル感が魅力。どれも白トリュフと合わせたいワインです。

3.ヴェネト州

ヴェローナの北にある美しい丘陵地帯では、数種類の陰干ししたブドウからDOCG アマローネ・デッラ ・ ヴァルポリチェッラ (Amarone della Valpolicella)がつくられています。凝縮感溢れるフルボディの赤ワインは圧巻。その東でつくられているDOC ソアーヴェ(Soave) も有名な白ワイン。とくに、昔からガルガネガ種が植えられている火山性土壌のクラッシコ地区のものを選ぶと、驚くほど熟成するミネラル感たっぷりのソアーヴェに出会えます。さらに東のトレヴィーゾ県では、世界的に有名なイタリアのスパークリング・ワインDOCG コーネリアーノ ヴァルドッビアデネ・プロセッコ(Conegliano Valdobbiadene Prosecco)が生産されています。フルーツやお花の香り漂うグレーラ種でつくられるプロセッコは、アペリティーヴォに最適!

4.フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州

アドリア海とアルプスの影響を受けるこの州では、酸味の効いたリボッラ・ジャッラ種やほろ苦い後味のフリウラーノ種など、辛口の白ワインが数多く生産されています。甘口派の方には、ウーディネ県にあるDOCG コッリ・オリエンターリ・デル・フリウリ・ピコリット(Colli Orientali del Friuli Picolit)がおすすめ。ピコリット種は果粒がとても小さくまばらで、それをさらに陰干しする大変稀少なワインです。この州はいま話題のオレンジ・ワイン※3のメッカでもあるので、多くの優れたつくり手たちに会って、個性的なオレンジ・ワインを試してみてはいかがでしょうか?

5.エミリア=ロマーニャ州

東西に広がるこの州は、州都ボローニャの西側「エミリア」と、東側の「ロマーニャ」で、まったく個性の異なるワイン文化を体験することができます。きりりと冷やして飲む赤やロゼの微発砲性ワイン ランブルスコ (Lambrusco)はエミリアを代表するワイン。多くの亜種が存在し、ほんのり甘口から辛口まで、お手頃価格で手に入ります。いっぽう、DOC ロマーニャのサンジョヴェーゼ(Sangiovese di Romagna)は、熟成するにつれて洗練されていく興味深いワインです。さらに忘れてならないのは、イタリアの白ワインでいちばん初めにDOCGを獲得したDOCG ロマーニャ・アルバーナ(Romagna Albana)。甘口や辛口があるので、こちらも幅広く選ぶことができます。

6.トスカーナ州

フィレンツェからシエナに広がる滑らかで美しい丘陵地帯では、「Gallo Nero(ガッロ・ ネーロ 黒い雄鶏の意)」のマークで有名なDOCG キャンティ・ クラッシコ(Chianti Classico)がつくられています。シエナ県モンタルチーノでは、貫録ある重鎮DOCG ブルネッロ・ ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino)が、モンテプルチャーノでは、より優しい口当たりのDOCG ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノ(Vino Nobile di Montepulciano)が優雅に迎えてくれます。すべてメインに土着品種サンジョヴェーゼ種を使っていますが、クローンやテロワール※4 の違いによって、ワインのキャラクターも変わってくるところが面白いところ。昔の規制にとらわれずにつくられた、「スーパータスカン」と呼ばれるモダンなワインも世界的に有名。

7.ウンブリア州

イタリア半島の中央に位置するこの州は、海に接してはいませんが、水に恵まれた緑豊かな美しい丘陵地帯が続いています。北のペルージャ県でぜひ飲んでおきたいのがサグランティーノ種100%のDOCG モンテファルコ・サグランティーノ(Montefalco Sagrantino) 。タンニンの強い風格のある長命ワインは、地元のジビエ料理などと合わせて頂きたい濃厚な赤ワイン。より柔らかさが欲しい方は、同じくペルージャ県でつくられているDOC モンテファルコ・ロッソ(Montefalco Rosso)がおすすめ。こちらはサンジョヴェーゼ種をメインに、サグランティーノ種などの黒ブドウを加えた、森のフルーツがたっぷり香る飲みやすい赤ワインです。トレッビアーノ・スポレティーノ種を使ったフレッシュな白ワインや、この品種でつくられるオレンジ・ワインも要チェック!

8.マルケ州

南北に延びるこの美しい州では、印象的なミネラルをもつ土着品種、ヴェルディッキオメインのワインに注目です。アドリア海に近いDOCG カステッリ・ディ・イエージ・ヴェルディッキオ・リゼルヴァ(Castelli di Jesi Verdicchio Riserva)と、内陸でつくられるDOCG ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ・リゼルヴァ (Verdicchio di Matelica Riserva)の両方を飲み比べてみると、テロワールの違いを実感することができます。港街・アンコーナ周辺の丘陵地帯ではDOCG コーネロ(Conero)をお試しください。丸くて存在感のあるタンニンをもち、赤い実のフルーツがぎっしりと詰まった飲みごたえのある赤ワインです。さらに、ここでつくられるスミレ香のする華やかなラクリマ種も印象に残る1本に。

9.ラツィオ州

ティレニア海とアペニン山脈に挟まれたこの州には、ブドウ栽培にとても適した火山性土壌の丘陵地帯が多く、たくさんの興味深いワインに出会うことが出来ます。とくに注目したいのは、DOCG チェザネーゼ・デル・ピーリオ(Cesanese del Piglio)。スパイシーで貫録のある魅力的な赤ワインは、ローマ県とフロジノーネ県で生産されています。そしてローマの南東にあるアルバーニ丘陵でつくられる有名白ワインといえばDOC フラスカーティ(Frascati)。一般的にシンプルで飲みやすいワインが多いなか、優秀なつくり手のモノは、火山性土壌を見事に反映したミネラル感溢れる美しい酸と複雑味を兼ね備えています。

10.カンパニア州

ナポリやカプリ島のあるカンパニアというと「夏の海」をイメージしがちですが、内陸のアヴェリーノ県イルピニア地方などの火山性土壌丘陵地帯は、標高が高く、昼と夜の気温差も激しいので、ブドウ栽培にとても適しています。ここでは、タンニンの強いアリアニコ種を使った「南でもっとも重要」と謳れる長期熟成赤ワインDOCG タウラージ(Taurasi)がつくられています。さらに、酸味がキリリと効いた清々しいDOCG フィアノ・ ディ・アヴェッリーノ(Fiano di Avellino)や、豊かなフルーツを想わせるDOCG グレーコ・ディ・トゥーフォ(Greco di Tufo)といったハイクオリティな白ワインも見逃せません。

11.プーリア州

東はアドリア海、南にイオニア海を臨む南北に長いこの州は、冬も温暖な地中海性気候に属しています。中央の内陸部にあるバリ県でつくられるDOCG カステル・デル・モンテ・ネーロ・ディ・トロイア・リゼルヴァ(Castel del Monte Nero di Troia Riserva)のネーロ・ディ・トロイア種や、ネグロアマーロ種もしっかりとしていて飲みごたえがあり、タンニンがスムーズで親しみやすい赤ワインです。タラント県やブリンディジ県などで栽培されている黒ブドウ プリミティーヴォ種を使ったワインは、辛口と甘口、どちらも試す価値あり。さらにこの州では、摘みたてのイチゴやチェリーの香りをもつパワフルなロザート(ロゼ)もよく飲まれています。

12.サルデーニャ州

北東部にあるガッルーラ地方の丘陵では、独特の塩気をもつDOCG ヴェルメンティーノ・ ディ・ガッルーラ (Vermentino di Gallura)がつくられ、魚介類を使った地元料理と素晴らしいマリアージュを奏でます。ティルソ川に近い西側のオリスターノでは、酸化熟成させたシェリーを想わせるナッツ香を伴った超熟白ワインDOC ヴェルナッチャ・ ディ・オリスターノ(Vernaccia di Oristano)がつくられています。こちらはカラスミ料理とベスト・マッチ!州全体で栽培されている黒ブドウ カンノーナウ種は、サルデーニャの代表品種。柔らかなタンニンをもった、濃厚な赤ワインをぜひお試し下さい。

13.シチリア州

イタリア最南端の海に囲まれたシチリアには、近年、多くの醸造家たちが注目している話題のワインDOC エトナ(Etna)があります。カターニア県エトナ山近辺の火山性土壌で育つ黒ブドウ、ネレッロ・マスカレーゼやネレッロ・カプッチョ種などからつくられ、南のワインとは思えないくらい優しい色合いをもった、繊細で優美な赤ワインです。白もまた、カッリカンテやカタッラット種など、テロワールから来る複雑なミネラルと優しい香りを持っています。シチリアを代表する黒ブドウネーロ・ダヴォラ(カラブレーゼ)種や、鮮やかな芳香を放つフラッパート種もおすすめ。

※1 統制保証原産地呼称
※2 統制原産地呼称
※3 赤ワインのように、白ブドウを皮や種といっしょに漬け込んでつくるので、オレンジ色を帯びた濃い色合いに。複雑味があり、タンニンも感じられます。
※4 その土地の土壌や気候、地形など、とりまくすべての環境


紹介者: ソムリエ プロフィール

吉田 希世美

よしだ きよみ

ソムリエ歴: 2003年AISソムリエ取得

プロフィール

日本の雑誌社で女性誌編集者としてCAZJunieESSEを担当し、ワインや料理、ファッション特集などを手掛ける。その後イタリアに渡り、2003年A.I.S.(イタリア・ソムリエ協会)のソムリエ資格を取得、その後プロフェッショナル・ソムリエに認定。 星付きレストランIl Luogo di Aimo e Nadia (イル・ルオゴ・ディ・アイモ・エ・ナディア)、Osteria Del Binariなどのレストラン、Rinascente MilanoのYN Vineria、フランス・ワイン専門店 Comptoir de FranceMilanoなどのエノテカで働き、ソムリエとしての経験を積む。Excelsior Enoteca Eat’s Milanoの店長を経て、2014年12月、ミラノで日本人初となるエノテカのオーナー・ソムリエとして、同僚のソムリエA.I.S.公式テイスターのSebastiano BaldinuとともにEnotecaWineをオープン。

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